愛の日々
 1-1-
 1〜11 2006.3.5〜2006.3.27

    

-1-

るんるんるん、おひさまぽかぽか春の日に、わたしはお花はたけにいきました。なにかいいことないかなぁ、なんて思いながら、お花を見ていた。こんな場所、二人で来ている子ばっかりで、わたしなんか一人だからつまんない。揃いの黄色いセーターを着た二人なんて、お花のかげでキスしてる。女の子はもうほんわか赤い顔して、もじもじしていて、男の子に抱かれちゃってる。
<ああ、あ、つまんないな・・・>
わたしも、もじもじしながら、つぶやいた。

     

カメラを持った男の子がいた。お花の写真を撮っている。その格好をみていたら、股を開いて中腰で、まるでお相撲さんが睨みっこしてるような格好で、黄色いお花と向き合っていた。わたし、その子の側へ寄ってみた。わたしは携帯で、写真を撮ります。その子の側で、赤いお花に携帯を近づけて、撮るふりをした。股を開いて写真を撮っていた男の子が、わたしをチラチラと見るのがわかる。わたしは挑発してるわけではないけれど、気にされて、声かけてこないかな〜なんて思っていた。

「きれいなお花やね、キミは携帯で撮ってるん、最近は携帯、おおはやりやね」
わたしに声をかけてきた。わたしは、ちらっと男の子の方を見て、軽く会釈した。わたしはちょっとドキドキしていた。カメラマンがお友だちってのも悪くないな〜なんて思いながら、こんにちわ!って声をかけた。
「写真に興味ある?」
「ええ、まあ、ちょっとだけ・・・」
「お花が好きなの?」
「ええ、まあね、好きといえば好きなんかなぁ・・・」
「大前ってゆうんだけど、キミ、なんていうの?」
「わたし?あさの、麻野裕子・・・」
まあ、大前健一と知り合ったきっかけは、そおゆうことでした。

     

春先の植物園で会ってしまった健一さん。お花の写真を撮ったあと、自動販売機で買った紙コップの珈琲を飲みながら、健一さんは、わたしにいろいろと話かけてきた。
「裕子さんって、可愛い感じだね、ボク、裕子さんの写真が撮りたいね」
「モデルさん?ふふっ、なってもいいですよ」
わたし、可愛く撮ってもらえるのなら、るんるんOKです。その気持ちを健一さんに伝わったのでしょう。休憩のあと、お花の前で、わたしは健一カメラマンのモデルになってあげたのです。

「携帯のメルアド教えてよ、写真出来たら送るから」
健一さんは、そのように言い、わたしのメルアドを、自分の携帯にインプットし、そうして、その場でわたしの携帯へメールを送ってくれた。
「じゃあね、また、会える機会があればいいね」
「わたしも、また会えたらいいと思う・・・」
そう言いあってわたしは、健一さんと植物園のお花ばたけでお別れした。わたし、お花を見に来てよかった、と思った。痩せ身で優しそうな大前健一。カメラマン大前健一。わたしをモデルにして写真を撮りたいと言った大前健一。わたしは植物園を出て、北大路の橋を渡りながら、そんなことをひとり呟いていた。

翌日、健一さんから写メールが送られてきた。お花の前で撮ってもらったわたしの写真を添えて、モデルの件、OKかどうかを確かめてきた。そうして、また会いたいと言ってきた。わたしは、返信した。またお会いしてもいいですよ、と返信した。そのメールを送ったあと、二日後の午後、植物園のお花ばたけで会うことになった。わたし、大前健一に興味を持った。きっと彼女はいない、フリーだと思った。カメラマンが職業なのかしら、とも思った。そういうことでいえば、わたしは、大前健一という男の子に興味を持ったのだ。

-2-

お花ばたけへは、約束の時間より少し遅れていった。健一さんは、お花にカメラを向けて撮影していた。
「やあ、麻野さん、こんにちは!」
「ごめんなさい、遅れちゃった」
「いいよ、来てくれたんだから、ありがとう!」
健一さんは、カメラマンスタイル。ポケットがいっぱい付いたチョッキを着ている。手に持っているのは、一眼レフカメラだ。
「じゃあね、今日は麻野さん、いや、裕子さんがモデルだ」
「よろしくおねがいします・・・」
わたしは、白っぽいワンピースを着ている。そのうえにブルーのブラウスを羽織っている。さっそく赤いお花の前に立たされて、撮影が始まった。

     

「こっち向いて、もっとリラックスして、うん、それでいい」
わたしは初めてのモデル体験です。意識しちゃうと、どんな顔をしたらいいのか判らない。
「おおっ、綺麗だよ、可愛いよ、裕子、神の毛を指ですくって、うん、それ・・・」
わたしは、右手の小指と薬指で、前髪を耳の後ろへあげる仕草をしていきます。
「カメラの方に向いてごらん、そう、目線をこっちへ・・・」
わたしは、健一さんに言われるままに、ぎこちなく目をカメラの方へ向けていく。わたし、健一さんから、綺麗だとか、可愛いだとか言われて、内心、うれしくて仕方がなかった。お世辞だとはわかっていても、わたしのこころは、あやしく揺れ動いているんです。

カメラマンの健一さん、カッコいいなと思った。わたしをモデルにして、いろいろ注文つけてくれて、わたしはモデルさんの気分で、前向いたり、横向いたり、お花を手にしたりして、いっぱい写真を撮ってもらった。
「休憩しょうか、裕子」
健一さんは、いつしかわたしを裕子と呼んでいる。わたしは、名前を呼び捨てにされて、ぐっと関係が近くなったように思った。
「ん?どうしたの・・・」
「なんでもないです、健一さんて呼んだらいいのかしら・・・」
「どうでもいいよ、健一でも健一さんでも・・・」
わたしたち、自動販売機で缶珈琲を買い、近くのベンチに座った。そうして、たわいない会話を交わしながら、連れ立って植物園を後にした。夜のご飯を一緒に食べようというのです。

-3-

北山通りはファッショナブルなんだけど・・・なんていいながら、健一さんはわたしをパンやさんの二階のレストランへ連れていってくれた。夜とはいっても、まだ夕方、外が薄暗くなった程度で、窓辺のテーブルから、お外が見えます。
「ここのパンランチが安くて美味しいんだ」
「わたし、ここでよくパン買うんだけど、二階は初めて」
わたしは、夕暮れの街路を見下ろしながら、健一さんがわたしにカメラを向けているのを意識した。
「ん、ここでも撮っておきたい、裕子の日々、なんて・・・」
わたしは、カメラの方へ目線を向けて、ピースしちゃった。

健一さんは27歳だといった。わたしは20歳だといった。健一さんはフリーターでカメラマンを仕事にしたいんだといった。わたしは学生だといった。健一さんはわたしよりちょっと年上かなと思ってたけど、27歳なんだ、見かけが童顔なんです。
「裕子って、モデル向きな顔してる、スタイルもね、写真集作ってあげたいね」
「写真集ですか〜ぁ、いいな〜ぁ、でも、ちょっと恥ずかしい・・・」
初めて会ってレストランの席に座って、わたしたちは、たわいなかったけど、いっぱいお話をしました。健一さんって、経済学で院までいったけれど、ドクターコースの途中で、芸術に転向したんだっていいました。健一さん、賢いんだ。出身学校でいえば、エリートさんじゃないですか。わたしのふわふわ女学生とは大違い!

     

「わたし、美学専攻なんです」
「そうなん、美学か、美術史なんかやるん?」
「ふふっ、わたしはね、愛と美について・・・なんて思ってるんですけど・・・」
「たとえば、どんなの?」
「たとえばね、クリムトとか、ベルメールとか・・・」
あんまり深入りしちゃうと、答えられなくなるから、わたしはそういってお茶を濁した。
「ボクは、浮世絵なんて好きだな、裕子の着物姿なんていいかもな・・・」
「わたしも、着物好きですよ、赤い柄なんて魅力感じますよ」
そんな会話を、とりとめなく交わしている間に、健一さんは珈琲を三杯もお替りしていた。

わたし、ちょっとドキドキしてた。お食事を終えたら、お別れしようと思ってたけど、健一さんとこのまま別れてしまうのが、なんとなくもったいない。でも、わたしたちこの日は、パンやさんの前で、お別れした。
「写真できたら、ボクのアルバムに載せるから、見てくれる」
健一さんのアルバムのアドレスは、メールで知らせる、といった。
「うん、いいけど、名前は出さないでくださいね・・・」
わたし、モデルさんの気分だったから、きっとステキな写真に出来上がると思った。
「じゃあ、またね!」
健一さん、わたしに握手を求めてきた。わたし、ちょっと躊躇したけど、右手を出した。健一さんの右手とわたしの右手が結ばれた。
「気をつけて帰るんだよ・・・」
「今日は、ありがとう・・・」

-4-

わたしまだ処女だったんです。男の人とセクスした体験、なかったんです。わたしの実家は、室町で織物問屋を営んでいます。家の躾がけっこう厳しかったし、わたし自身も、中学も高校も、それに大学にしても、お勉強を中心にしていた。ボーイフレンドってゆうか、男のお友だちは、いるにはいたけど、健一さんとなってしまったような、関係にはならなかった。でも、女の子なんだから、教養を身につけた良妻賢母形女性になりたい、なんてことは考えていなかった。ちっちゃいときからやっていたピアノも、ピアニストになるほど才能ないんだし、詩を書いたりしていたけれど、詩人になれるほど才能ないんだし、でも、学校の成績はそれなりに良かったから、ある意味、いいとこの娘、おしとやかさ折り紙つきの女の子だったと思う。

健一さんには、一目ぼれってほどのイカレ方はしなかったけれど、まあ、いい感じ、わたしが好きなタイプです。大学だって一流だし、芸術をやりたいっていうのも、わたしと共通してるし、わたしは、内心健一さんといい仲になりたいな〜なんて思ってしまいました。メールで送られてきたホームページアドレスを開いてみると、お花をバックに撮ったわたしの写真が載っていた。
「ふふ、いい感じ、モデルさんだ、これ、わたしなのよ・・・」
わたし、けっこうるんるん気分で、独り言をぶつぶつ、さすが健一さんはカメラマンなんや、と思って、ありがとうのメールを送った。

     

四条河原町を東にいくと高瀬川があります。その川沿いに古くからある喫茶店があります。健一さんが、指定した喫茶店です。数日後、学校を終えての夕方に、わたしはその喫茶店で、健一さんと会いました。わたしが入っていくと、もう先に到着していて、女の子用の雑誌を見ていた。
「こんにちわ!」
わたしは、奥の席にいた健一さんの前に立って、挨拶をしました。健一さん、知っていて知らんふりをしていたんだと思う。ファッション雑誌をパタンと閉じて、驚いたような顔つきで、わたしを見上げます。
「やあ、こんにちわ!今日は、可愛い学生さんスタイルだ・・・」
なんていう言い方だと思ったけど、高校生には見えないでしょ?でも、ギンガムチェックのスカートだ、白いブラウスの上はセーターだし、襟にリボンつけてましたね。

わたし、ちょっと期待している。暗くなって、人のあまりいない処で、肩を抱いてもらって散歩している。いいんですよ、まだ処女なんだけど、健一さんにあげてもいいんですよ。ああ、奪ってくれてもいいの、いいえ、奪って欲しいんだ。
「この前、クリムトとかベルメールって云ってたね」
健一さんは、覚えている。わたしが興味をもっている作家さんを覚えていて、それなりに調べたようでした。
「ベルメールなんていいね、すげえアーティストじゃん・・・」
「ええ、まあね、シュールリアリスト・・・」
わたしは、ベルメールの感覚が好きなんです。エロチックだし、性的魅力のある作品だし・・・そのような話を、健一さんにしたように思います。

-5-

祇園さんの石段をのぼって本殿の前を通り、それから南の門から健一さんと連れ立って歩きました。もう暗くなっていたし、昼間は観光の人たちでにぎわう道だけど、もう人がいなかった。健一さんがわたしの肩に触れてきた。わたし、肩を抱かれた。ちょっとびっくりしたけれど、ドキドキ、わたしルンルン、わたしも健一さんの背中に手をまわしました。健一さんは何もいいませんでした。そのまま歩いて、狭い通りの角へきたとき、わたしの肩を、ぎゅっと、きつく握り、わたしを抱き寄せました。
「裕子・・・」
健一さんがわたしの名前を呼び捨てにし、わたしを抱きしめ、頬と頬を合わせてきました。そうしてすぐにわたしを抱いた手を離し、また肩を抱いてくれて、歩き出した。わたし、変な気持ちになっていました。初めて男の人に肩を抱かれたんです。頬をすり寄せたんです。

高台寺の前まで来て、道路から暗闇のところへ入って、健一さんは、わたしを抱きしめ、キスしてきた。わたし、来るものが来た、って感じで、目を閉じ、健一さんに従おうと思った。唇を合わせ、わたし、うっとりしていた。まるで夢の中のような感じです。お顔が火照ってくる感じで、ぽーっとなってたと思う。わたしの唇へ、健一さんが舌先を入れてきました。わたし、唇を少し開いて、受け入れた。舌先がわたしの舌先にあたり、わたしたちは、わたしの唇の奥で、絡ませあわせたのです。
「裕子・・・」
わたしの名を呟くように云った健一さん。<健一さん・・・>わたしは心のなかで呟いた。
「裕子を誘惑したい、裕子と一緒にいたい」
健一さんは、わたしの唇から離したあと、そういいました。わたしは、もう雲の上を歩いてるような感じで、なにもわからない、ふわふわした気分でした。健一さん、唇の感触って柔らかい、舌が硬くてぬるぬるしてる・・・そんなことを思った。

     

わたしが、男の人から、お股に手を入れられた最初でした。高台寺の壁に押し付けられ、スカートの中へ手を入れられ、ふとももとかお尻を撫ぜられ、健一さんは、お腹のあたりからストッキングとパンティの中へ、手を入れてきたんです。
「裕子、好きだよ・・・」
健一さんの手は冷たかった。ああ、だめ、こんなとこで、ああ、だめよ・・・、わたし、心の中で、ちょっとドギマギしながら、嫌ではない感情に包まれていきました。健一さんは、ディープキス。わたしたち、唇を重ねあわせ、舌と舌を絡ませ、わたしはパンティをはいたまま、手でお股を触られていました。

その夜は、清水寺の坂道まで歩いて、そのまま坂を降りて、東大路通りへ出て、北へ歩いて、祇園さんの石段の下で別れました。
「ゴメンね、また会えるね」
別れしなに、健一さんがわたしに尋ねるようにいいました。
「ううん、また、会えると思う・・・」
わたしは、暗がりでの出来事に動転していたし、なにも考えられない状態になっていて、曖昧に答えたんだと思う。
「また、会おうね、いいね」
健一さんは、念を押すように、わたしにいい、そうして右手を差し出され、握手をして別れた。

-6-

学校の喫茶ルームで佐倉里奈に会いました。里奈はわたしと同じクラスの親友です。里奈は元気なさそうな感じでした。なにか心配事があるような浮かぬ顔をしていた。
「どうかしたん?」
わたしが訊ねると、里奈は、出来たかもしれへん、と云うのです。
「もう10日も遅れてるんよ、だから・・・」
なによ、里奈、彼氏いたのは知ってたけど、セクスしちゃってるんだ。わたしは心配するというより、ちょっと嫉妬した。わたしは、まだ経験したことないんだよ。でも、女の子にはいつもつきまとう心配なんだ。わたしも、その後心配することがあったんだけど、そのときになって里奈の気持がわかったんだけど、わたしは里奈になにも云うことができなかった。

「彼って、わたしとするとき、逝く直前までスキンつけてくれないのよ、そりゃその方がいいんだけど・・・」
里奈は、わたしの知らないことを、わたしに云う。わたしは、処女だとは云えなかった。わたしはちょっと焦りました。
「出来ちゃったらどうすんのよ、病院いったら?」
わたしはそう云うしか方法がないんじゃないかと思った。里奈は、診てもらうのが怖いといいました。わたしだったら、どうしたらいいんだろ・・・里奈の話を聞きながら、わたしはママの顔を思い浮かべていました。

     

里奈の話を聞いて、わたしは健一さんに会いたいと思った。里奈が彼と一緒にいて、ご飯を作ってあげたりしてる話を聞いて、わたしも健一さんに、そうしてあげたくなったのです。母性本能・・・。そんな感じの気持ちだったのかも知れません。この前、夜の東山で、抱かれて深いキッスを交わして、からだを触られたことを思い出します。また会おうね!といった健一さんを思い出します。あの日の夜、わたしはお家に帰って、お風呂に入って、それからベッドに入ったあと、ひとりえちしちゃったんです。健一さんに触られた感触を思い出すようにして、わたしひとりでイってしまったんです。わたし、心が悶えて疼いているんです。里奈の話は、もしほんとうだったら怖いことだけど、でも里奈の話を聞いて、もう心がうずうずしてきて、わたしから健一さんに会いたいって連絡するんもプライドが許さない感じだし、そう思いながら、その夜もベッドに入った。

里奈の妊娠したかも知れないという心配そうな顔と、まだぼんやりとしか思い出せない健一さんの顔を思い浮かべながら、わたしは、お乳を撫ぜながら、お股に手をあてがっていました。
「ああ、ああ、ああん・・・」
わたしは、クリをつまみ、チツのきわを撫ぜさすり、健一さんの顔を想いうかべて、ベッドのなかで、だんだんいい気持ちになっていきました。
「ああん、ああん、ああっ、いい・・・」
わたしは、右指を二本チツの入り口を、グチュグチュと刺激しながら、男の人のォ棒を想い描き、指のかわりにォ棒が入ってくることを想像していました。
「いい気持ち、いい気持ちよォ・・・」
ピクンピクンとからだが引きつるような感じになってイクとき、わたしは健一さんのことを、好き好きっ!って心で言ってあげて果てました。

-7-

健一さんからメールが来て、お会いすることになりました。待ち合わせの場所は、四条大橋のそばにあるドトールの二階です。紅茶を入れたカップをトレーにのせて、二階へいくと、健一さんは窓辺のテーブルに座っていました。手を振って手招きしてくれたけど、わたしはトレーを持っているから、顔だけで会釈する。わたしの家の門限は午後九時です。八時半にはお別れしないとだめなんだけど、それまで四時間ありました。
「裕子、可愛いじゃん、真っ白のフリルつきブラウスか、お似合いなんだね」
「いやね、健一さんったら、わたし、白が好き・・・」
「白がスキって、清純なんだね、眩いね」
「それ、意味深ですね、清純じゃないですよ・・・」
母が買ってくれるお洋服は、それなりに上等なんです。ワンルームにいる子とは、ちょっと違うのかも知れない。でも、お小遣いは少ないので、困ってしまうことが多いです。

健一さんとは、芸術のお話をします。健一さんは、芸術はエロスだよ、って言います。そういわれれば、そうかも知れないと、直感的にわたしも思う。芸術しよう!って健一さんが言うとき、それはエロス体験をいうのだと解釈します。ドトールで一時間ほどおしゃべりして、それから鴨川堤を歩きました。四条大橋から三条の上へと歩いたんです。ぽかぽか陽気だけれど、川面の風は少し冷たかった。二人連れは川面に向かって寄り添っています。恋人どうしなんだろな〜、わたしは、健一さんと歩きながら、わたしたちも恋人どうしだよね、そのように思って、健一さんと腕を組んでいました。
「裕子の写真を見ているとね、うずうずしちゃうね、学校ではもてるんだろ」
「そんなこと、ないです、わたし、男の子なんか、おぼこくみえちゃうですよ」
「そりゃ、ませ子だね、裕子は大人なの?」
「ええっ、そうでもないけど・・・」

     

三条大橋を過ぎて、御池の橋も過ぎて、どんどん北上しながら、夕暮れどきになってまわりが暗くなってきました。わたしたちは鴨川堤から道路へ上がり、河原町通りを渡って、御所の中へ入りました。そうして芝生のまえのベンチに座りました。もう暗くなってきた御所のなかだけど、かなり明るい。健一さんは、わたしの肩を抱きしめ、わたしは健一さんの肩に頭をもたげ、脈絡のない会話をしていました。
「木の陰へいこうか・・・」
健一さんがそう言って、ベンチから立ち、芝生の中の大きな木の方へいきました。暗い木陰で、わたしは抱かれました。わたしはだまって抱かれていきます。唇と唇を合わせてキッスをし、舌と舌を絡ませて、わたしって、もうぼ〜っとなって、お顔がカッカしてきて、お姫さまの夢心地に入っているようでした。

ああ、もっと抱いて、もっときつく抱いて・・・。わたしは心のなかで呟きながら、健一さんがわたしのからだに触ってくるのを、待っていました。健一さんがブラウスのボタンを一つ外しました。そうして手をその間から差し入れてきて、ブラの中へ手を入れてきた。
「はぁああ、ああっ」
お乳をじかに触れた冷たい健一さんの手。この前はお股を触られたけれど、今日はお乳から触られる。スカートの下へ手を入れられて、ストッキングとパンティがふともものつけ根までおろされた。
「裕子、じっとしてろよ・・・」
健一さん、わたしのお乳を触ってた手を、お股にあてがってきました。そうしてわたしの手をもって、健一さんのパンツの中へと導き入れたのです。

-8-

御所の大きな木の下で、健一さんに抱かれ、健一さんのお股の棒を握ったまま、わたしはお乳とお股を直接手で触られていきます。わたしのびっくりの気持ちは、健一さんのお股棒のことです。暖かくて硬いような柔らかいような、初めての感触でした。男と女、わたしたち男と女の恋人どうし。わたしは暗い木陰で、秘密の時間を過ごしています。クリムトの接吻。わたしの好きな作品だけど、あんな格好で、わたしは健一さんに抱かれている。
「はぁあん、健一さん、ああ、ああん、健一さん・・・」
わたし、きっとそんなこと呟きながら、ぼ〜っとして健一さんに可愛がられていた。健一さんは、わたしのお乳に唇をつけてきた。ちょっとしゃがみ込んで、ブラウスのボタンを外し、ブラのホックを外し、胸をひろげさせて、わたしのお乳をグルグルとまわすようにして、乳首を唇ではさんできたんです。わたしの手から、お股棒が離れ、わたしは立ったまま、くらくらと倒れてしまいそうになりました。

そのうち、健一さんは、ふともものところで留まっていたストッキングとパンティを、足首まで下ろし、片方の靴を脱がせ、足首から抜き去ってしまったのです。そうしてわたしに、足をひろげさせたのです。
「裕子、じっとしてるんだよ、動いちゃだめだよ」
わたしにスカートの裾を持たせ、めくりあげる格好にして、健一さん、わたしのお股に顔を埋めてきたんです。わたし、えっちされている。わたし、暗がりでえっちされている。淫らな裕子、ああ、わたし、健一さんに暗がりでえっちなことをされている。わたしは、ズキズキと感じながら、えたいのしれない怖いものが、わたしを包み込んでいくような気持ちになっていました。

     

わたし、健一さんにお股の恥ずかしいところに唇をつけられて、もう目の前クラクラしていました。ああん、恥ずかしい・・・。御所の木陰で、こんなこと、健一さん、だめ、だめよ・・・。
「裕子、いいだろ、いいんだろ」
健一さんは、わたしを見上げ、うわずったような小さな声で、わたしに言います。
「ああん、あかん、あかん、だめ・・・」
わたし、どうしたらいいのか、分らなかった。冷静さなんてなかった。健一さん、わたしを抱き、芝生の上に寝かせた。露出した足にチクチクと芝の先があたって痛い。

健一さんは、わたしを寝かせたまま、立ってズボンを下ろしてから、わたしに乗りかかってきました。わたし、足をきゅっと締めていた。
「裕子、いいだろ、いいんだろ」
「ああ、あかん、こんなとこで、あかん・・・」
健一さん、わたしの膝をひろげてきた。わたし、膝に力を込めてひろげないようにする。わたし、抵抗していたんです。無意識です。気持ちが動転していた。
「裕子、足の力を抜けよ」
健一さんの声に、わたしは、膝の力を抜いてしまいました。わたしの膝をひろげ、わたしにのしかかってきて、お股棒をわたしのお股にあててきた。
「ああっ、いた、いたい、いたいっ!」
わたし、処女を失う痛み、張り裂けるような痛みが襲ってきたんです。

-9-

わたしは覚悟していました。健一さんに処女をあげる。わたしはそう思っていたのに、膝を広げられ、股棒が挿しこまれてきて、動転してしまって、抵抗した。それに痛みばっかりでした。それにわたし、もうわけが分らなくなって、怖くなっていました。でもわたし、御所の芝生のうえで、健一さんと結ばれているんだ。
「裕子、ちょっとの辛抱や、堪えて!」
わたしがいたい、痛いって何度も言ったからでしょうか、健一さんは、手でわたしの口を塞ぎ、お尻に手をまわして持ち上げ、わたしのチツを裂く股棒を奥まで挿し込んで、ぐりぐり回すのでした。わたし、強姦されてる感じで、ほんとに怖かったんです。
「ああっ、裕子、いくぞ!」
健一さん、いつもとは違う、荒々しい別人のような感じで、わたしを食いちぎろうとしている。わたし、半分泣いていました。やめて、やめてっていいながら、健一さんを受け入れているのです。健一さん、ピクンピクンと股棒をけいれんさせて、わたしのチツのなかで精液を出していったのです。

わたし、初めてセクスをしたんです。終わったあと、健一さんは、ティッシュを指に巻いて、チツのなかの健一さんの精液を、拭ってくれました。わたし、泣いていました。うれしいというより、底知れない悲しさ、淋しさの気持ちでした。暗い木陰でパンティを穿きくのを手伝ってくれたけれど、わたしの処女を、こんな場所で捧げたことへの哀しみだったと思います。
「裕子、ごめんな、どうしようもなかったんだ」
「ううん、いいんよ、いいの、わたし・・・」
「嫌いになった?」
「ううん、そうじゃない、そんなんじゃない・・・」
わたし、健一さんと結ばれたことを後悔しているんじゃない。

     

暗い芝生の木陰から砂利道にでて、健一さんがすたすたと歩き出した。わたしは、あとを追いかけるようにして、後ろについて歩きました。わたし、健一さんと結ばれて、もっと抱き合っていたい。わたしの悲しい気持ちを、暖かくだいて消してほしい。わたしは、健一さんの気持ちがわからない。わたしとセクスして、わたし、こんなに淋しい気持ちになるなんて思わなかった。
「健一さん、もっとゆっくり歩いて・・・」
わたしは、健一さんの後ろ姿をみながら、そう呟いた。

御所の門を出たところで、わたしたちは別れました。もう八時をとうに過ぎていて、家の門限に間に合わないかもしれないと思いながら、わたしたちは握手もしないで別れました。
<どうしょ、どうしょ、ママに知られるんとちゃうやろか・・・>
わたし、明るいお店の前でバスを待ちながら、体験したことを想い浮かべながら、恥ずかしいような、悲しいような気分になっていました。それより、健一さんの、終わったあとの感じが気になってしょうがなかった。
<もう健一さんと会えへんかも知れへん>
そんな感じがこみ上げてきて、わたし、どうしたらいいのか、早くママに会いたいような会いたくないようなことを思った。
それから、里奈が妊娠したっかも知れへんといったことが心配になった。

-10-

わたしのお部屋は、洋間八畳です。古い町家なんですけれど、部分的に洋館になっていて、出窓からお庭が見える。紫色した牡丹の花が咲き出して、5月の風がレースのカーテンを揺らしている。わたし、健一さんとはあれから会っていないんです。夜の御所の芝生のうえで、処女を失ってから、健一さんからメールが来ていない。わたしの心は、健一さんのことばかりを考えてる。男はみんな狼なんだから、裕子だまされちゃだめよ!高校生のころ、ママからそう言われたことを思い出しながら、わたしは健一さんが狼なのかどうか知りたいと思っています。

     

今日は、午後からの講義だから、午前中はお部屋にいます。ドアをロックし、窓からお庭をぼんやりして見ているわたし。健一さん!わたしはもうあなたのものよ、わたし、後悔なんてしてないわ、結婚なんて考えられないけど、お嫁さんになるのかも知れないですね・・・。わたし、スカートのなかに手を入れてる。お勉強机の前に座って、精神学講義の教科書をひろげて、こっそり左手をスカートの中に入れて、パンティのお股の縁から、お指を入れている。
<ああ、健一さん、ここ、ここよ、健一さん、痛かったんよ・・・>
わたしの指、じょりじょり毛を撫ぜながら、柔らかい唇を触ってあげてる。
<わたし、もう子供じゃないんだよ、経験しちゃったのよ・・・>
恥ずかしい唇を、指で少しひろげてあげる。しっとり濡れてる。ぬるっとした感じに濡れてるのがわかる。

健一さんの股棒で突かれて、痛みしか感じなかったわたしのお股。ひとりでするときには、入り口だけしか触らないから、痛くないんですね。わたしは、こっそりパンティを脱いでしまって、椅子に座ったまま、机の上にひろげた教科書を読んでいるふりをして、ひとりえちをやりだして、ふうっとなって、ぼんやり健一さんの顔を想い出している。
<可哀想な裕子ちゃん・・・健一さんよりいいんですよね・・・>
わたし、指で恥の唇を擦ってあげながら、ふうっとなって、目の前がかすんできてる。
<ああ、いっちゃう、いっちゃう!>
わたし、中学生のころから、同じことやってる、恥の唇まわりがグジュグジュっと濡れてきて、イキそうになってきて、わたしは小さな叫び声をあげて、そうしてイってしまった。

わたし、どうしたらいいのかしら。健一さんにメールしようか、やめておこうか迷っているのです。辛いです。夜の御所の芝生で、わたしが抵抗したことで、健一さんはわたしを嫌いになったんだ。いいえ、わたしを好きなんだ。だけど、わたしにあんなことしたから、遠慮してるんだ。わたしは、健一さんのことを思いながら、心が揺れている。健一さんのホームページを開いてみた。わたしの写真が載っている。おかしなポーズを取って、お花の前で、にっこり笑ってピースしている。わたしは切ない気持ちです。健一さん、わたしにメールをください。会いたい!ってゆうメールをください、お願いします。

-11-

あれから一週間経っても、健一さんからのメールがなかった。わたしは、終わりたくない。その思いがだんだんと強くなってきて、わたし、健一さんにメールしました。健一さんと会ったのは、翌日の夕方でした。四条大橋のドトールの二階で会いました。
「うん、ちょっとね、忙しかったんよ、それで・・・」
健一さんは、わたしより仕事優先なんだと思った。
「あれから、わたし、待ってたのに・・・」
わたしは、再び健一さんと会えて、うれしい気持ちでした。でも、うれしくない感じで接しようと思った。それからマクドでバーガーを食べ、祇園さんの方へと歩いて、繁華街から離れた道の暗がりに入り口がある、ラブホテルへいきました。

わたし、こころのなかで、ずっと健一さんに抱いて欲しいと思っていました。男と女。わたしは、一人で生活する力なんてまだなかったけれど、健一さんを求める欲求は、一人前にあった。
「裕子、ひとりで裸になれる?」
大きなベッドに占有されたルームで、わたしを抱きしめたあと、健一さんは言います。わたし、健一さんが脱がしてくれるんだと思っていたのに、自分で脱ぐんだというのです。
「うん、恥ずかしいって?だめだな、裕子、脱がして欲しいの?」
わたし、うつむいて、服を脱ぐのためらってたから、健一さんがしょがないな〜というように、わたしを抱き寄せて、セーターを脱がし、ブラウスのボタンを外して脱がし、ブラが取られ、スカートを脱がしストッキングを脱いだところで、わたしをふかふかのベッドに寝かせてくれたのです。わたしは生成りの白いパンティだけをつけていました。

     

ベッドのそばで、健一さんもブリフだけの姿になって、それからわたしの横に寝そべってくれました。わたしは、健一さんに抱かれていきます。初めてホテル室内で、わたしを抱いてくれている。健一さんは、わたしの片方のお乳を両手で握り、乳首を飛び出させて唇をつけてきた。わたし、まだ冷静だった。いきなりのことで、わたし、ちょっとどぎまぎしていました。唇でわたしの乳首をはさみ、引っ張り、そうして舌先で、乳首をなめだした。手からしぼりだされた乳首への、初めての刺激です。そうしながら、片手をパンティの中へ入れ、お股のなかへ入れてきて、もぐもぐとまさぐりだしてきたのです。
「裕子、ゆっくり可愛がってやるね、やりかた教えていくからね」
健一さんは、ベッドの上に座り、わたしは寝たままの格好になりました。

お乳を握って揺すり、お股を指と手の平で揉みほぐすように動かす健一さんです。
「裕子、まだ柔らかいね、お乳もお股も・・・」
「ああっ、ああん、健一さん、ああん、わたし、わたし・・・」
わたし、健一さんの二つの手で、わたしの誰にも触らせたことがない処を、揉まれているのです。まだ、気持ちいいとは思えない。わたしは、パンティを脱がされ、素っ裸にされました。健一さんもブリフを取り去り、素っ裸になった。そうしてわたしの頭を持ち、健一さんの股間へ、導かれたのです。健一さんのォ棒が、目の前に来た。むっくりと大きくなっている。健一さんは、そのォ棒を握らせ、わたしに咥えさるのでした。






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