縛り絵物語

縛り絵物語-1-
樽屋と京子

     

二条木屋町に屋敷を構えた樽谷の道楽は、女を囲って愉しむことに尽きた。商売の傍ら、絵描きを得意としていた。その道楽は女を置いて描くこと。密かに描き溜めた責絵を、土蔵の奥に仕舞いこみ、女を連れ込んでは、一緒に見る。その場で女を縛りあげ、その図を絵にしたて描くのだった。京子は樽谷のお好みに仕立て上げられていく女。普段は芸事を習い、身のたしなみをつけながら、樽谷の愛に応えるていくのだった。
「京子の姿は美しい、もっともっと美しくおなりよ、ね!」
「は〜い旦那さま、わたくしもっともっと美しくなりたい!」
樽谷の薄暗い土蔵で、そんな言葉を交わしながら、親子ほども年が違う男と女。樽谷と京子の交情が始まっていくのだった。
樽谷は棒を持ち出し、裸になった京子の足首を、拡げて括ったあと、腕を後ろへ廻させて手首を足首と一緒に縛った。
「ほお〜京子、美しいぞ〜そうした京子はほんとに美しい!絵に描いてやるから、からだを、ほれほれ、もっと反り返らせて・・・」
「ぅうう、あっああ〜旦那さま〜ぁああ〜なんだかむずむずしてまいります、うっ、うっ、ううわあ〜」
樽谷は、反り返った裸の京子の姿を、絵に仕立て上げながら、気が高揚してくると京子をなぶりはじめる。こうして、樽谷と京子は、お互いの心を通わせ、睦ましい日々を重ねていくのだった。

     

京子を縛った交情が記された樽谷の日記には、慶応元年との記録がある。京都の町が揺れうごき、各地で暴動などが起こっていたころ、樽谷は京子を絵のモデルに、痴態のさまを描いていくのだった。
「ぁああ〜旦那さま、そんなに拡げたらお股が割れてしまいますぅ、ぅうう〜ぁああ〜!」
樽谷の好みは、京子の足に棒をかませて太腿を拡げさせたまま、股間の芯を弄ってやることだった。世間が騒がしいと心が滅入る。樽谷は、京子の身体を隅々まで愛撫してやり、そうして心の安堵を、京子から頂くのだった。
「京子のお股は、罪深い〜男をころす力があるんだからね〜!」
「ぁああ〜旦那さま、いい、いい、いい気持でございます、ううう〜!」
「世の中が物騒だと、ハツハツ、樽谷の心も物騒だね〜!」
樽谷は、京子のからだを愛しみ、責め苦を与えて快楽にさせてやるのだ。男と女、樽谷と京子。樽谷は京子の悶え呻く様子を観察し、絵筆をもって書き残す。京子は樽屋の庇護を受けて、女の業を燃え盛らせていくのだった。

      

物騒な世の中とはいえ、樽屋のこころは京子を可愛がることで、ひと時のこころの休まりを得るのだった。京子を土蔵の中へ連れ込んで、股間を拡げさせて手足を縛り、酒の肴に京子を可愛がってやるのだ。
「ぁああ〜旦那さま、わたいでよければ、慰めてあげますぅうう〜」
「ああ、京子はやさしいね〜こうしてオレの欲を、満たせてくれる・・・」
「ぁああ〜ん、旦那さま、わたいをもっと可愛がってくださいな・・・」
樽屋のこころと京子のこころが交わって、その上からだが交わっていくのですから、幸せそのものだった。樽屋の商売が傾いてきた。乱世の時代に貸し倒れが相次ぎ、破産寸前に追い込まれていた。樽屋は、そんなことなど知らんふり。京子のからだに溺れていきたい、そのようにも思うのだった。

       

「ほれ、京子、この絵のように縛ってあげようかい、おまえ好きなんだろう、ええ!」
樽屋は、以前に描いた絵を京子に見せながら、京子の表情の変化を確かめていく。京子は、差し出された縛り絵を見て、顔をそむける。嫌なわけではない。恥ずかしいのだ。心に渦巻く情念とでも云おうか、京子の気持ちを揺さぶるのだ。
「ぁああ〜旦那さま、わたい感じてしまいます、だめ、だめですよ〜そんな絵、見せつけないでくださいな・・・」
京子の顔色がしだいにこわばっていく。樽屋に仕込まれてきた手業。妖艶の疼きを醸しださせる樽屋の手口に、京子は、しだいにその気になっていくのだ。樽屋は、京子の着ている着物を脱がせて裸にし、手を後ろへ組ませて荒縄で括りはじめた。手首から乳房を巻いて縛ったうえに、腰に褌を締めさせる格好で縛ってやる。
「京子、おまえはほんとに美しい・・・こうして縛った姿を見ていると、わしゃもう卒倒しそうじゃ・・・」
「ぁああ〜旦那さま、わたい、ぁああ〜うれし、ぃいいですぅう〜ふうう〜」
こうして樽屋の気持ちと京子の気持ちが交わり、喜悦の感情が重なり合っていくのだった。

     

京子を欲情のままに愛する樽屋は、世の中の喧騒には目を向けたくなかった。京の町角では、日夜、武士達が刀を抜いては切りあいを繰り返していた。樽屋の屋敷がある二条木屋町は、船着場が目の前にあった。高瀬川を登り下る荷物船も、しだいに少なくなったような気がする。
「なあ、京子、この屋敷もいつ、どうなるや知れんな〜焼き討ちされるかも知れんな〜」
樽屋は、裸にした京子を寝かせて愛撫を繰り返しながら、呟くのだった。世の中が物騒になり行き場を失う気持ちの樽屋。唯一の逃げ場が、京子と戯れるときだった。京子の身体は柔らかい、豊穣に満ちた豊満だ。樽屋は、京子の身体に溺れる。いやはや、自ら溺れていこうとしているのだ。
「ぁああ〜旦那さま、わたい、もっともっと、ぁああ〜旦那さま、わたいを可愛がっておくれなさい・・・」
京子は、樽屋に股間を弄られ、秘壷に指を挿し入れられて、身悶えながら涙を滴らせた。樽屋の唇が、京子の乳首を吸い、秘壷に挿しいれては秘汁を吸い上げる。そのたびに、京子は悶えて喘ぎ、樽屋の心を癒すのだった。

     

京子を荒縄で括りあげる。樽屋は、裸にした京子の手首を後ろへまわさせて括ってやる。乳房の上と下を通し、タスキがけにしていき、乳房が絞りだされる格好にさせる。上体を縛り上げると、柱を背にして座らせ、ふとももとふくらはぎをくっつけるようにして縛った。そうして京子の股間を拡げさせたままにして置くのだった。
「京子、綺麗だ!ほんとに綺麗だ、美しい!一枚絵を描いてあげる・・・」
樽屋は、絵筆を持ち、京子の縛られた姿を書き写していくのだった。描きすすめながら、乳房を触ってやり、乳首を抓んでやると、京子は、軋んだ喜悦の声をあげだすのだ。拡げた股間を、筆先で撫ぜてやる。秘唇を開いて液汁に筆を浸して絵具と混ぜる。
「ぁああ〜旦那さま・・・京子は、もう、ぁああ・・・そこ、そこは・・・ぁああ〜筆先が感じます、ぅうう・・・」
樽屋の絵。絵具と秘汁で描かれる京子の縛り絵。樽屋の秘密の絵となるのだった。そうして絵があらかた仕上がると、京子は樽屋に可愛がられる。京子の拡げられた股間へ、樽屋の持ち物が当てられる。そうして竿が埋め込まれだすと、京子は、ヒイヒイ声をあげ、悶えて喘いでいくのだった。

       

樽屋の京子を弄ぶ責め方がだんだんと激しくなってきた。世の中は武士達が斬りあいを繰り返し、尊王攘夷だとかいうお触れで、心がささくれたっているのだ。樽屋の心情は、京子を弄ぶことで、ひと時を癒すのだった。京子は、樽屋の弄びになれてきた。裸のからだを縄で巻かれて締められると、からだの中がズキズキし、火照ってくるのがわかった。
「ぁああ〜旦那さま、わたいをもっと苛めてくださいな、ぁあああ〜もう、死んでも悔いはありませぬ・・・」
「なあ、京子、おまえは優しいおなごじゃ、オレの心を癒しておくれ、いいね〜!」
「はあ〜ぃい、いいい〜旦那さま〜もっともっと、わたいをイカセテほしい・・・」
樽屋は、京子を正座させたまま、荒縄でグリグリと縛っていく。そうして一歩下がって京子が悶え喘ぐ姿を眺め、絵筆を動かせていくのだった。

      

樽屋の正妻時子が、京子の責めに興味をもった。樽屋が大坂へ出かけた二晩の間、時子は、京子に樽屋との関係を白状させた。そうしてお仕置きしてやることになった。
「ぁああ〜奥さま、わたい、旦那さまに捧げさせられているのでございます。わたいは、そんな〜好きだとは申しません、お義理でございます〜・・・」
「本気でないなのなら、お仕置きだけですませてやる、いいね、お尻をお出し!」
時子は、京子を後ろ手に縛り上げ、腰に巻いた縄を股間に通した。そうして縄尻をぐいっと持ち上げてやり、京子の秘所を縄で擦りつけていくのだった。
「お前、いくつだった?」
「はい、奥さま、わたい十六でございます・・・」
「そりゃ、まだアオ娘だね、わたしがもっと仕込んでやるよ!」
女が女を責めるとき、女の急所を知っている。それゆえ、責められる女はヒイヒイと喜悦の声で鳴き叫ぶ。京子は、時子からお仕置きを受けながら、樽屋の可愛がりとは一味違う、喜悦のなかを彷徨っていった。

     



小説

短編小説-1-





HOME

かおり

かおり小説集目次



かおり短編小説集

表紙目次に戻る