愛情の部屋
1〜5 2025.2.1〜2025.2.5

愛情の部屋
-1-
<出会い>
村上純也が河野美幸を最初に見かけたのは、三条大橋のたもとある喫茶店でした。まだ寒い日の午後、鴨川が見えるテーブルの一人席に座って、読書している女子、清楚なワンピースを身に着けたロングヘアーの女子、後ろ姿だから顔はわからなかったが、窓からの光に読書する女子に心を揺すられたのです。美幸の前へまわった純也が、存在を示すように、斜め前の席に座って、手にした珈琲カップをテーブルに置きました。美幸が純也の姿に気がつきます。ひろげていた単行本は短歌が掲載されているようです。純也が、目線を送ると、美幸は目を伏せました。男と女が出会ったときです。
「短歌ですね、文学してるんですか、興味あるなぁ」
斜め前に座っている美幸へに声をかけた純也です。美幸の反応は、素知らぬ顔ですが、存在には気づきました。男が欲しい、と内心、思っていた美幸。いまどき、大学の文学部で学ぶ女子、純也の存在に気を止めたようで、純也のテレパシー、モノにできる、と思ったのです。
「はい、そうです、文学しています、はい・・・・」
美しい女子だ、純也は心の中でうろたえる感じで、美幸のことをそう思ったのです。
「ぼくも、文学部です、太宰治研究してるけど、キミは?」
「ええっ、わたし、与謝野晶子とか、ですけど・・・・」
美幸は、彼いないから、見栄えが優しそうな純也に、ちょっと興味をもつのです。
「そうなの、与謝野晶子かぁ、ぼくはよくわからないなぁ、教ええほしいなぁ」
「わたし、それほど、しらないです、ゼミで選択したばかりですから・・・・」
「そうですか、勉強会しようか、文学研究」
「おなまえ、わからない、先生ですか、そんな感じですけど・・・・」
「常勤講師なので、まだ、これからの輩です、よかったら!」
「ええ、よかったら、同席しますわ、わたし、ひとりですから・・・・」
まだお互いに名前もわからない関係、だけど、男と女、惹かれ合うところがあるから、隣に座ることになった美幸です。純也は名刺を持っているので、美幸にわたします。美幸は名刺を持っていないから、口頭で名前を告げます。
「かわのみゆき、院の二年目です、はい24です・・・・」
「ぼくの後輩だ、ぼくはちょっと年上だなぁ、28歳になっちゃった」
それから、美幸は純也と文学の話しを交わすけど、お喋りは純也からの話題が中心です。太宰治、美幸も斜陽とか、高校生の時に読んだから、うんうん頷きながら、純也に魅力を感じだしたのです。純也は、美幸の裸姿をイメージしています。清楚なワンピース姿のその中に、ベールに包まれた24歳になる女体があることを想像してしまいます。28歳の村上純也、大学院で文学研究をしながら、短大の常勤講師を務めています。表向き、文学研究と教員だから、美しい仕事ですけど、やっぱり男だから女のことが気になって、ちょっと変質にも思われてしまう<女を飼いたい>欲求があるんです。アダルト映像を観たりするから、そういうことをやってみたいと憧れるのです。住まいは2Kのマンション、そのひとつは秘密部屋仕立て、女を飼う部屋、美幸を性的に養ってみたい。その日は別れしなに、LINE交換した美幸と純也でした。

愛情の部屋

-2-
河野美幸は大学院の二年生、この春には修士を終えて、博士課程に進むことが決まっています。先日出会った男の人、村上純也のことが気になっていて、LINE交換したけど、その後は未交信です。美幸の部屋はワンルームです。六畳一間で簡単なキッチンとバストイレです。
<ああ、どないしてはるんやろ、せんぱい、わたしの先輩・・・・>
朝目覚め、洗顔して、簡単に朝食をすませて、机の前に座った美幸です。パソコンをひらいてSNSに、おはようの記事アップ、すぐさま数人からイイネがきて、その存在、自分一人ではない、共有感、顔を知っている相手ではない、男性が多い、暇な人が多いんだ、美幸もそのひとりです。
<ああ、どないしょ、感じちゃうわ、ああ、どないしょ・・・・>
ムズムズ感、なにか欲求不満な感じで、躰が疼いてくるんです。男のことを想うからかも知れないし、ムズムズするから男のことを想うのかも知れません。
<せんぱい、やってほしい、ちんぽ、くわえてあげたい、どないしょ・・・・>
机を前にして座って、左の手を股へもっていってしまう美幸です。薄いショーツを穿いているだけの股間、部屋着はゆるゆるワンピです。裾を太腿が露出するところまでひきあげ、ショーツの股布を除けて、左手の中指で、柔らかいゾーンのトサカに触れてしまうのです。セックスの経験は、それほど頻繁ではなかったけど、学部の学生だった三年のとき、彼と性交をした経験があります。処女だった美幸は、戸惑いながらも、好きだった彼の欲求に応えてあげて、そのうち快感を覚えるようになって、ひとりになってからは、自慰、オナニー、男の躰を想いながら、手淫、道具は使いません、濡れてきて、太腿をひろげきってしまって、指の腹でクリトリスを刺激して、かるく果ててしまう美幸です。
<せんぱい、なにかしら、魅力、感じちゃった、せんぱい・・・・>
ううっ、うううううっ、快感がこみあげてきて、ぎゅっと締まった鈍い刺激がなんともいえない快感です。濡れてしまった股の真ん中、美幸はイッテしまって、目を閉じ、数秒ですが深呼吸、股の真ん中へショーツの股布をかぶせて、立ち上がり、窓辺に置いてある飲みさしの珈琲を呑み、喉を潤したのです。そのうち、十時ごろになって、LINE、純也からの着信、午後に会えないかとの内容です。すぐには返信しない美幸、少し時間を置いて、小一時間、相手には既読にしておいて返信を遅らせる、というテクニックを使っちゃうんです。
<午後三時、三条大橋のスタバ、わかったわ、いくわ、よかった、LINE、来たから・・・・>
純也の顔がチラチラ頭に浮かんでくる美幸です。ダンディーとは言えないけど、ちょっとインテリで暗い影の感じもしなくない男の人、美幸は、ただいまフリーだから、深いつき合いになってもいいかなぁ、との期待感もふくらませます。

愛情の部屋

-3-
村上純也はまだ大学院で文学研究をしながら、或る短大の常勤講師です。先日、スタバで知り合った河野美幸へ、午後に会えないかとLINEしたところでした。しばらくして、美幸から返信があり、三時の待ち合わせOKとのこと、純也の気持ちは安堵です。28歳の純也は、女が欲しい、セックスする相手としての女、セックスフレンドです。恋愛にまで発展しなくても、セックスさせてもらえば、それでもいいと思うのです。
<でも、なぁ、苛めてやりたいんだよなぁ、女を、苛めて歓ばせて・・・・>
心の中ではアブノーマルなことを思っている純也は、愛好しているアダルト映像に時間を費やしているんです。
<河野美幸かぁ、24歳、裸にして、オメコ剥きだ、かわいがってやりたいなぁ!>
純也は、この前に会ったばかりの後輩、美幸の清楚さに、一目惚れしてしまったようで、妄想は妄想を呼び、河野美幸をいつの間にか裸にして縛り上げ、股をひろげさせて、たっぷり弄っている光景を想像するのでした。午後三時、その美幸と会うことになって、心がウキウキ、ちょっとうろたえるけど、文学の話しからえろい話題ができたらいいなぁ、と妄想するのです。
<この部屋に連れ込んで、飼育してやりたいんだよなぁ・・・・>
待ち合わせしているスタバへは三時少し前にはいった純也です。美幸は、定刻、三時、珈琲カップを手にして、テーブルに近づいてきて、顔をあわせたのです。清楚なワンピース、淡い水玉模様の白っぽいワンピース姿です。
<うっわぁ、きれいやなぁ、かわいいなぁ!>
「こんにちわ、先輩、ありがとうございます、よろしくお願いします」
美幸は、すでにブラウン系のコートを脱いでいて、もう春が来たかのような淡い色合いのワンピース姿です。華奢な手、首筋が麗しい、滑らかそうな肌に見える美幸の顔。
「ありがとう、まあ、お座りよ、お話ししましょう」
美幸は、テーブルを介して右斜め前の椅子に座ります。座ってもスカートで膝が隠れています。ストッキングを穿いた足から黒い靴は大人のたしなみです。純也は紺のズボンにブレザーです。さっぱり運動靴を履いています。
「そうなの、夜まで時間があるんだ、ごはん一緒に食べようかねぇ、河野さん」
「ええ、大丈夫です、わたし、ひとりずまいですから、夜ご飯、助かります」
向こうに大きなガラス窓があって、鴨川堤が水平にみえます。明るい光が射し込んでいて、美幸の顔が光っているように、純也には思えます。
「ぼくは、短歌は得意じゃない、文章を書く話しだけど、文体とか」
もどかしい、純也は官能文学を語りたいと思っているのに、本題には入れないもどかしさです。
「ええ、わたし、女の文学、艶ってゆうのか、耽美ってゆうのか・・・・」
美幸は、何を思って言葉を紡ぎだしているのか、純也には計り知れないところです。女の美幸から耽美という単語とか、ちょっと見た目の清楚さからは想定外な感じで、純也は戸惑います。

愛情の部屋

-4-
スタバでお茶して小一時間、まだ夜の食事には時間があります。純也と美幸は恋人同士の気分になって、個室のようになった喫茶店へはいるのでした。恋人たちが語りあう喫茶店、座席に仕切りがあって、カーテンがあって、かなり密室になります。
「わたし、こんな喫茶店、初めてです、なんだか、ふ〜っとなってきちゃた・・・・」
才女であるはずの美幸が、猫撫ぜ声になっていて、恥じらう仕草で純也に囁きます。純也は、最初のデートからこんな密室のような処へ連れ込んできて、拒否されるかと思ったけれど、案外、素直についてきた美幸に、いっそうの親しみを覚えます。
<食事の続きに、酒飲んで、ホテルってことも有りかなぁ>
純也にはその魂胆があって、清楚な感じをうける美幸の躰を見ています。美幸は、なにが起こるのか、成り行きでは抱きあって、いい気持ちにさせてもらいたい男子、村上純也先輩は、美幸の好きなタイプです。
「はい、だめですよ、村上さま、それ、ああん、だめですよぉ・・・・」
横に並んで座った右側の純也が、左側の美幸の太腿に手を置いていて、膝を露出させてくるのです。美幸は、もうドキドキ、スカートの上から太腿を撫ぜられる感触に、びびっと躰の真ん中をかけあがる感覚に、おしっこ洩らしそうな気がしてきます。
「美幸って、ぼくの後輩なんだね、なにかの縁だよ、いいんだろ」
<ああああ、村上さま、わたし、だめ、壊れそうなのよ、ああ、ああん・・・・>
文学の研究者ぶって才女を醸す美幸は、本心、本音、男が欲しい、24歳、女の躰が、欲求しているのです。男と女がボックスのなかで過ごせる喫茶店、アモーレ、純也は、知り合った女を連れてきて、その気にさせていくテクニックを駆使するのです。女たらしとか、恋人同士になって、セックスして欲求を解消する派です。男と女の微妙な関係、お互いに求めあう扉をあけるのは、いつも純也のほうです。
「ねえ、与謝野晶子って、たくさんの子供産んでるだよね」
「そうなのよね、与謝野鉄幹って晶子の旦那だけど、子育てとか、してるのね」
会話は、うわずった感じで、表向き、文学の知識をかぶせるけれど、純也は美幸を、美幸は純也を、異性として求めているのが心の底です。もう六時をすぎた頃、アモーレを出て、木屋町から河原町へでる道筋のビヤホールへ、食事に誘ったのが純也です。
「素敵な女子さん、美幸さん、ぼくの後輩、うれしいなぁ、乾杯!」
「はい、乾杯、先輩、村上さま、教えて欲しいです、いろいろ・・・・」
「へぇえええ、いろいろって、なにを?、ぼくは官能派だよ、官能小説」
ジョッキのビールで二人して乾杯、エビフライとかハムとかのランチを前にして、会話していく美幸と純也です。28歳の男子と24歳の女子、いいカップルです、適齢期、いっしょに棲むことでなにもかも昇華していく男と女です。
「ああん、少し、酔っちゃったわ、わたし、油断してたのね、先輩に・・・・」
「ほんのり、赤い顔になっているんだね、美幸ちゃん、かわいいよ!」
ビヤホールでの食事が終わって、木屋町の方に出て高瀬川べりを下がると四条小橋にでます。高瀬川の西側の道を入ると喫茶フランソア、上品な喫茶店で美幸が好みの喫茶店、いつの間にかほろ酔いの美幸がここでココアを飲んでいると、いっそう酔いがまわってくる感じで、ほんのり、気分最高、純也の前で恥じらう気持ちです。
「休憩しに行こうか、美幸ちゃん、いいとこがあるんだよ!」
「はい、ああ、わたし、どうしょ、わたし、はい、休憩したい、です・・・・」
高瀬川べりにあるミューズという名の小さなラブホテル、美幸は、純也に連れ添われ、ドアを開いてもらって、指定された休憩する部屋、モミジという部屋へはいったのです。

愛情の部屋

-5-
高瀬川べりにあるラブホテル、ミューズ、そのモミジという名の部屋、愛の巣です。美幸は少し酔っていて、まるで夢の中のよう、純也に肩を抱かれて、愛しあう部屋へやってきたのです。セックスする目的で、用意された部屋は、少し夢の中に浮遊する気持ち、躰が開放されていきます。立ったままの美幸を、純也が抱きます。立ったままです。ぎゅっと抱きしめる純也。美幸の匂い、柔らかい肌の匂い、男心をくすぐってきます。
<いい匂いだ、女の匂い、おお、感じちゃうわ、いいねぇ>
<ああ、せんぱい、わたし、好きにして、いいのよ、苛めて・・・・>
コートを脱いだあと、淡い色合いのワンピース姿になって、抱かれる美幸です。会話はありません、ワンピースのうえからまさぐられる背中、腰を抱かれて、美幸は洋服を着たままの純也の腰へ、密着になり、キッスを受けます。
「うう、ううん、はぁああ、せんぱいぃ・・・・」
もう理性を失ったかのような、ナマの呻きのような声を洩らす美幸に、純也は、その唇を唇でふさいでやり、右手を美幸の首後ろへまわし、髪の生え際を撫ぜていきます。美幸を封じ込める、着ているモノを脱がせてやる、美幸の裸体を鑑賞してやる、男の純也は、女の美幸を、愛欲のままにその躰を、自分のものにしていくのです。ダークな色の部屋、モミジの間はダブルベッドが主でそのわきに木製の丸テーブルと布地の背凭れ椅子が一脚、テレビがあり冷蔵庫があります。
「はぁあ、だめ、ああ、いい、せんぱい、すきに、して、いいのよ・・・・」
うわごとのように言葉を洩らす美幸を抱いた純也。ワンピースを脱がしてやる純也。美幸のインナーは白、レースの縁取りが施されたシュミーズです。柔らかい女の香りがする美幸、160p、50`、痩せてはいません、ふくよかな肩からの腕です。パンストを脱がせて、白いショーツを露出させ、シュミーズをおろしても太腿が半分露出です。
「うん、うん、美幸ちゃん、すきにしてやるよ、いいんだね」
「はい、ああん、せんぱい、わたし、どうしょ、どないしょ・・・・」
純也は、セーターを脱ぎシャツ姿、ズボンを脱いでブリーフ姿、半裸になります。白いレースのシュミーズを胸のうえまでたくし上げ、ブラジャーのホックを外してやり、胸をあらわにさせてしまいます。女の躰、美幸の躰、白い肌、柔らかい胸、ぷっくら盛りあがった乳房、純也は初めて見る美幸の乳房を、まだ触らずに、見るだけです。
「ああん、せんぱいぃ、どないしょ、わたし、ああ、だめだわ・・・・」
へなへなとちからが抜けて、へたりこみそうになる美幸を、純也が支え、ベッド横の背凭れ椅子に座らせます。座らせるときにシュミーズをめくりあげて脱がしてしまい、ブラジャーもはずしてやります。美幸をショーツだけの姿にしてしまう純也です。
<あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、せんぱい、いい、わたし、苛めて・・・・>
背凭れ椅子に座った美幸は、かなり酔いが醒めていて、でも柔らかい照明の部屋のムードに酔っていて、女の理性を失って、躰を交わらせたい気持ちです。経験ありの美幸です。自慰で過ごしてきたここ数年、ナマの男の姿を見て、仰ぐ気持ちで迎えているのです。美幸は、ショーツだけの姿で、立たせられ、ベッドのうえへ倒れ込むようにして横たわったのです。純也が、先に全裸になって、美幸の横に座ります。それから、純也が、美幸が穿いているショーツを脱がしてやります。純也に眺められる美幸。仰向いた美幸は左の腕をむねにまわし手ブラにして、右手の平は陰毛のうえに置くのです。恥じらう美幸、うっとり、見られていることがわかって、顔を横に向けてしまうのでした。



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