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羞恥の館

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羞恥の館-2-
 8~17 2018.1.29~2018.2.12


 

-8-
<裕子のえろす>
風鈴館の営業時間は午後1時から午後9時まで。三条木屋町を上がって西に折れたところにある三階建ての小さなビルです。円山明良がオーナーで大村裕子が従業員として従事している風鈴館です。裕子がメインで、学生アルバイトが三人、ローテーションを組んで店番をさせています。一階フロアが書画の販売スペース、二階がギャラリー、三階は宿泊施設といえばわかりやすい。
「いらっしゃいませ、木村先生、お待ちしておりました」
ガラス窓がついたドアを開けて入ってきた日本画家の木村晴樹を待っていた裕子が、軽く挨拶をします。先日、接待で、円山と共に食事をしたときの客が、この木村晴樹でした。40才、新進の日本画家、円山のお目に適っていて、風鈴館へよく来ていて、あれこれ画集を買っていったり、自分の作品を販売してもらうのも目的で、画商の円山と懇意にしているところです。
「このまえは、ありがとう、大村さんだったね、ぼくとよく似たなまえだから、覚えたよ」
「ええ、わたしが大村、それに木村、先生ですものね」
にこやかに振る舞うのは店を預かる者として、当然の接客態度で、裕子はそれなりに心得ています。どちらかといえば和風好みの裕子です。日本画を描かれる木村晴樹は、女体のエロス画というか春画を描く画家でもあって、その時の雅号は東国(とうごく)です。
「きょうは、あなたに、会いにきたんでしすよ、円山さんには、ないしょ」
いかにも画家さんというような風には見えない木村晴樹ですが、決してサラリーマンとも見えない。自由人、そんな言いかたがあるなら、得体の知れない自由人、とでも表現するのが良いようです。
「出版の、話があるでしょ、ぼくの、それ、大村さんが世話してくれるんですよね」
「ええ、わたしが、出版までのお手伝いをさせていただきます、よろしくおねがいします」
「わかってるよね、風景じゃなくてあっちの方だよ」
あっちの方というのが、聡い裕子にはすぐにわかって、それが春画集のことだと了解です。木村春樹を前にして、それらの絵を思い浮かべると赤面しそうになる裕子。春画ですから、男と女の性交の図です。
「はい、あっちの方って、おっしゃるのは、東国様の雅号で描かれている、あれですよね」
「そうそう、あれ、あれ、あれです」
「そうそう、あれですよね、あっちの方の出版ですよね」
「そうなんだ、それに、円山師匠から、キミをモデルにと推挙されている、って知ってる」
疑問符系の言葉尻で、裕子が絵のモデルになるようにと、描かれている策略です。40才独身の新進作家、木村春樹を風鈴館専属画家として囲い込みたいと画商円山は考えているのです。円山は苦渋の判断で、裕子を生贄に差し出す、というのです。

-9-
日本画家の木村春樹は絵師の家系で、祖父の代から父の代、そうして自分になって世間では、あの木村家の跡取りだともっぱらの噂で、その甘いマスクと憂えたような表情で、雑誌にも登場する絵師です。風景が、美人画、日本の風物を描く技法で、画商を通じて売れていきます。しかし、晴樹には、それだけでは物足らなくて、別名で現代春画を描いていて、それがまた週刊誌などでスキャンダルではなくて、覆面画家ということで、取材をうけるときは覆面して、まともな記事にされるほどです。
「ですから、先生、わたし、先生の絵のモデルになっても、よろしいですのよ」
大村裕子は一階の書画販売スペースのデスクうを介して晴樹との会話です。清楚なワンピースを着た裕子です。端正な顔立ち、ふっくらした体つき、ワンピースを着ていても均整とれたプロポーションだとわかります。
「そう、モデルになってくれる、ありがとう」
アラフォー独身の晴彦は、ひとまわりも若い裕子を、見て、ネックレスもイヤリングもしていない、コスメもほとんどしていない、腕と首筋から素肌の白さを知るのです。
「モデルのかっこうは、絵のような、かっこうで、描かせてもらうけど、いいのかな」
「はぁあ、いいですのよ、わたし、東国さまのモデルに、なりますから」
晴樹ではなくて東国のモデルということは、江戸時代浮世絵春画よりもいっそうエロチックな様相を帯びた絵、現代春画のモデルです。
「それで、先生、ご出版の絵のことですが」
「そうそう、豪華本にまとめてもらって、限定百部だよね」
「そうです、先生、候補20点の中から、12点を選んでいただくのですが」
「ああ、それね、その選択は、キミに任すよ、キミがディレクションしてくれたら、任すよ」
「ええ、それで、よろしいんですが、わたしがお選びさせていただいて」
いずれの絵も濃厚な女のからだが描かれていて、特に性器が誇張され、マニアにはたまらなく情欲を呼ぶ日本画です。
「モデルの件は、円山師匠にも了解済みだから、ぼくのアトリエへ泊りがけで来てほしい」
「わかりました、わたし、先生のアトリエで、お泊りさせていただいて、楽しみますわ」
木村春樹こと別に持つ雅号東国は、裕子を囲うことになるこの先を、想像して、わくわく、それだけで下腹部が催してきます。
「そうだね、大村裕子さん、来週だな、平日で、三日、二泊三日で、来なさい」
「ええ、その予定で、行かせていただきます、楽しみです」
裕子は、からだを明け渡すことも承知のうえです。日本画家の系譜を継ぐ木村晴彦と、内縁関係になっても、それは受け入れようと思う裕子です。アラフォー独身の東国画伯は、銀閣寺に近い山ぎわに、アトリエを構えていらっしゃいます。

-10-
裕子が二泊三日の旅支度をして、銀閣寺に近い山ぎわの、木村春樹こと東国のアトリエを訪れたのは、火曜日の昼過ぎです。銀閣寺へいく観光客からのがれて右手は哲学の道です。少し行ったところを山の方へいくと、和風の門構えで屋敷です。アトリエは別棟で、洋風仕立てです。裕子は、春樹画伯の担当になったから、今後は頻繁に、このお屋敷を訪れることになります。
「はい、お店のほうは、土日にお客さまがいらっしゃいますから、平日がよろしいのです」
「そうですか、それじゃ、安心だ、アルバイトの子で、お店は大丈夫なんですか」
「わたしに連絡取れなくても、円山がおりますから、大丈夫です」
キリッとしまった体つき、面長の美人顔、ショートカットの髪の毛が、清楚な感じをかもしている裕子です。スーツケースにインナーの着替えをいれ、洗面道具とコスメ一式、小旅行のいでたちです。アトリエは16坪という春樹。畳に換算32畳、八畳間を田の字に組んだ広さです。そのほかにバストイレ、キッチンと仮眠ができる六畳のシングルベッドが置かれた部屋があります。
「荷物は、ここに置いておけばいい、ここは自由に使ってもらえば、いい」
裕子のかぐわしい匂いが、漂ってくる感じで、春樹はこの美女を受け入れて、内心、動転している自分を、処理できるかどうか、迷ってきています。
「準備が出来たら、デッサンさせてもらうから、ラフな格好でいいよ」
木綿の薄手で生成りのワンピースに着替える裕子。インナーは身につけたままです。アトルエに入ります。広いはずのアトリエも、描かれた絵があり、絵の具や筆が並ぶ大きな机というか作業台があるから、それほどに広いとは、裕子には思えません。
「あら、先生、ここには、東国さまの絵は、ございませんの?」
生成りのワンピース姿になった裕子が、アトリエに置かれた絵が、風景画や着衣の美人画ばかりで、東国の雅号で発表される絵は、見当たらないのです。それは、春樹は、別の保管室にある、というのです。アトリエからは見えませんが、母屋の庭に続く蔵に保管しているのだと。
「あとで、そこへ行って見せましょう、コレクションの浮世絵とかも、あるから」
40才の春樹はイケメンです。背もそれなりに高くて端正な姿は、男性モデルとしても通用しているところです。
「立ったままで、いいから、一枚、スケッチだね」
裕子は、ただ、単に、立っただけ、足は少し内股な感じで、ショートカットの髪は乱れることもなく、清楚な感じです。28才の裕子は、まだまだ、若さばかりの美肌です。

-11-
アトリエで、最初のスケッチはインナーをつけたまま、生成りのワンピース姿で、立ったままでした。五分とかからないスケッチです。まだここへ来たばかりの裕子には、スケッチされているあいだ、目線を微妙に動かしながら無言です。アトリエのなかを見ています。右には大きなガラスの窓がはまっていて、その外は山の斜面になっていて、雑木が生えています。左は、大きな鏡が張ってあり、その横側はハメ込みの大きな書棚です。応接セットのテーブルと黒革製のソファーがあります。それくらいの調度品で、ほかは絵が描かれる道具類、筆とか絵の具の瓶とか、高級感あふれるシックな色合いです。
「そうなんだ、祖父の代からだけど、ぼくになって、手直ししているんだ」
語りかけてきたのは晴樹のほうからで、スケッチが終えられるときです。裕子は、初めてのアトリエ訪問で、モデルという仕事で来ているから、緊張しています。
「先生の血筋は日本画、それも京都派の流れを組む、新進の作家さん」
「そうでもないんだけれど、世間ってのは、血筋とか、肩書ばかりを、重んじるんだ」
「でも、春樹先生と、東国先生が、おなじお人だとは、世間は知りません」
男と女、広い屋敷のなかの広いアトリエ、そのなかで男の春樹先生と、風鈴館のディレクター、女の裕子の二人だけです。何かが起こるかもしれない、裕子は、成り行き任せで、なされるがままでいこうと思っているところです。東国が描く浮世絵というか錦絵などは、こってり男と女の交情を、リアルに描かれているのです。裕子は、やっぱり、東国の絵を見る時には、ざわざわと胸騒ぎがしてきます。このアトリエには、その気配はありません。このアトリエは木村春樹画伯のアトリエなのです。
「先生がおしゃってた、土蔵って、見せて、いただけるんですか」
「そうだね、これまでは円山師匠にしか見せていないんだけど、裕子さんには、特別だね」
母屋の庭の横につくられている土蔵です。春樹は、その土蔵を、空調管理して絵を貯蔵しているという噂です。スケッチが終わって、裕子は、土蔵を見せてもらえることになります。アトリエから出て、廊下でつながる母屋の手前にある土蔵です。扉がひらかれ、電気がつけられ、春樹にみちびかれ、ワンピースにカーデガンを羽織った裕子が、素足にスリッパを履きます。
「すごい、凄いですね、先生、凄いです」
土蔵のなかに足を踏み入れ、天井からの電灯に照らされた、オレンジ色の部屋。六畳二間ほどの内部、高い天井、棚になっていて絵が収蔵されています。床には数点の春画が置かれ、その描かれた色艶に、裕子が驚いてしまったのです。土蔵の真ん中は四畳半ほど、紅い絨毯が敷かれた床です。太くて黒ずんだ角柱は中心を外れていて、鉄のワッパがいくつも付けられています。天井部には井の形に鉄棒が組まれていて、鉄のフックがつけられたロープが降りるようになっていて、三方が棚のコーナーに、行李と呼ばれる衣装箱が置かれています。蓋されているから、中に何が入れられているのか、裕子にはわかりません。アラフォー独身の春樹こと東国は、土蔵に入ったときから、ムラムラと、情欲がわいてきて、清楚なワンピ姿にカーデーガンを羽織った裕子のからだを、意識してしまいます。

-12-
土蔵の内部は、高い所に小さな窓があるだけで、手元は暗いから天井からの照明で明るくされています。四畳半ほどの絨毯敷の床は、ふわふわ、素足の足裏に気持ちいい、なんと床暖房になっているんです。
「そうですか、裕子さんは、美術館の学芸員をなさっていたんだ、詳しいわけだ」
裕子の後ろから春樹が声をかけてきます。二人だけの土蔵のなかです。声をかけられ、ハッと気づいた裕子。土蔵の扉が閉められ、密室状態になっているのです。そのとき、肩に春樹の手が置かれ、後ろ向きのまま、抱き寄せられてしまったのです。
「あっ、だめですよ、先生ぇ、こんなところで、だめですよぉ」
ハスキー気味な声が、裕子から小さくですが洩れます。強い抵抗でもなんでもなく、ワンピを着た裕子のからだは、春樹に抱かれてしまいます。春樹の腕の中で回転させられ、向き合ってしまって抱かれる裕子。立ったままです。土蔵の中は、それだけで密室です。その重厚な色合いに、裕子は、意識を吸いとられるかのように、目の前に立てかけられている東国の名で描かれた春画の世界へと、のめりこんでいくのです。
「あっ、あっ、せんせい、ああっ、先生・・・・」
抱かれてキッスされだすと裕子はもう、そのまま崩れてしまう感覚で、からだの力を抜いてしまいます。
「ううっ、うううっ、ふぅううっ」
春樹の行為は手際よく進められます。まるで慣れて慣れて慣れ尽くしたように、裕子は生成りのワンピースを脱がされ、スリップをめくられ、ブラをはずされ、ショーツを脱がされてしまったのです。その白くて透けたスリップも脱がされても、裕子は無抵抗です。なされるがままに為されたい、そんな思いがあったから、抵抗しないまま、春樹も裸になるようにと仕向けるのです。
「ああ、だめ、ああっ、先生、縛りは、ああっ」
いきなり、裕子は、東国に縛られていきます。まだ交わってもいない相手から、土蔵に入ってきたところで、抱かれて縛られだしたのです。
「裕子クン、円山師匠から、お聴きだとおもう、緊縛モデルのはなし」
「ああん、それは、それとなく、お聴きしておりましたけど」
少しびっくりの裕子です。行李の蓋がひらかれて、細縄が取り出されます。慣れた手つきで春樹は裕子の後ろにいて、後ろ手に縛られる裕子。
「あっ、ああっ、はぁああ、はぁああ」
裕子のくちからはもう甘えるようなハスキー声が、洩らされてきます。後ろに手をまわしたまま、絨毯に座る裕子。後ろから春樹が抱いてきます。足首を交差させられ、細縄が巻かれ、引き上げられると、膝が開き、太ももから足首が、ひし形になってしまいます。足を縛られてしまって、裕子は苦しい体位にされます。肩から背中を、柱に凭れさせる格好で、臀部がもちあがり、股間が丸出しにされてしまったのです。

-13-
日本画家木村春樹40才のアトリエは銀閣寺近くの山ぎわの大きな屋敷の一角です。モデルとして訪問した28才の大村裕子。風鈴館のディレクターを仕事にしている才女です。裕子には、性への偏向があるようで、正常位ではなくて、苛められることでますます性の歓びが増すようになってきたのです。風鈴館のオーナー円山明良60才には、そのことを見抜かれ、従順してしまった裕子でした。でも円山は初老になっていて、性欲があっても、十分の女子を自分の持ち物では満足させられなくなっているから、裕子にとっては、物足りないことしきりでした。そこへまだアラフォー独身の木村春樹と会うことになって、こころ踊ったのは事実です。
「ふううん、裕子さん、嫌がらないんだ、こんなこと」
木村春樹こと東国画伯は、後ろ手縛りで足首クロスの股開きに、恍惚の表情さえ思わせる裕子に、驚きを隠せない心境です。東国には、この裕子の姿態と感覚に、神さまに畏れをなす感覚で、ゾクゾクとしてくるのです。
「はぁああ、先生、いやぁああん、そんなことぉ」
「ふふふふ、おそそが丸出しになってる裕子さん、素敵だよ、とっても」
縛られて、股をひろげた裕子の姿態を、座り込んで、正面から見る東国です。お尻を絨毯において、背中を柱に凭れさせている裕子の足は、足首が交差されて括られ、胸にまで引き上げられた格好だから、羞恥の処がもろ出しになり、正面から東国の目線に晒されているのを、意識してしまう裕子です。
「好きなんだろ、裕子さん、こんなこと、されるのが、好きなんだろ」
「うむ、うむ、東国さま、そんなこと、あらしまへん、そんなことぉ」
「ふふっ、ふふっ、顔が、紅くなってきていますよ、裕子さん、ふふっ」
東国は、裕子の前にあぐら座りです。裕子の太ももに手をさしのべ、親指の腹で、股と太もものつけ根のところを、横に擦りだすのです。左右の親指、その腹で、横に擦ると、縦割れの唇が開いてきます。
「ああっ、東国さま、そんなこと、されちゃ、いけません、ああっ」
裕子は、乱れる気持ちを、押さえるかのように、為されてくる東国の指の動きに、羞恥の反応を示すのです。
「裕子さん、いいんだろ、好きなんだろ、こうして縛られるのが、そうなんだろ」
「いや、いや、東国先生、そんなことあらしまへん、そんなことぉ」
土蔵のなかで、いきなり、こんなことをされるなんて、夢夢、思いもかけなかったことだから、気持ちが乱れて、動揺しているんです。好きとか嫌いとか、そういうことではなくて、裕子には、幼いころから、このようにされることで興奮してしまう性癖があったのです。十年も前には、インターネットで、誰にも知られることなく、内緒で、見て読んだエロスな写真や映像と文章。
「いいじゃないか、本能の赴くまま、裕子さん、ほうら、濡れてきてるじゃないか」
左右の親指の腹が、陰唇の外側の裾に置かれて、横にひろげられる裕子。後ろ手に縛られ、足をひし形にされて胸元にまで引き上げられた格好。からだが痺れてきて、触られる刺激と交わって、裕子は気を失いそうです。

-14-
土蔵のなか、東国が描いた春画を保管している棚のまえ、四畳半の空間に絨毯が敷かれ、執務用の机が置かれ、肘掛椅子が置かれている残り三畳の広さに大きな柱です。裕子は、後ろ手に縛られ、足首を交差させて括られ、その足首は乳房の前にまで引き上げられた格好。薄い透けたスリップだけの着衣で海老縛りだから、そんなに耐えられるものではありません。背中を柱につけ、お尻の芯を絨毯につけ、股間が斜め上向きです。東国が裕子の前にあぐら座り、何もつけない裕子の股を、弄りだしているのです。
「いいですね、裕子さん、うぅふふっ、デッサンよりも、これがいいね」
「ひやぁん、先生、ひやぁああん」
正面に座る東国の、両手の平がペタンと、裕子の縦割れ陰唇の外側におかれます。手の平が左右、横にずらされます。土蔵の中は電灯のオレンジっぽい光です。裕子のからだが揺らめきます。しっとりと濡れる美しさだと木村春樹こと東国は思います。
「美しい、麗しい、ぼくの理想だ、そうですよ、裕子さん」
「いあぁあ、東国さま、そんなこと、そんなこと、あらしまへん」
「いや、いいですよ、、綺麗な姿の裕子さん、おそそ、まるだし、ゾクゾクしますよ」
「ああん、ひやぁああん、東国さま、そんなこと、おっしゃっては、ひぃいい」
ぺったりと、陰唇の外側に手の平を置かれた後ろ手に縛られ足をひし形にされ、引き上げられている出版ディレクターの裕子です。恥ずかしさと縛られている苦痛が伴って、いいしれない恍惚に、からだと心を委ねてしまいます。
「うっふふ、裕子さん、ぼくは、きみを、こうして、こんなこと」
「ああっ、あっ、あっ」
「してあげるのを、夢に見たんだよ、裕子さん」
服を脱いだ東国は、上半身裸、白い六尺晒の褌で、腰から股を結んでいます。それに裕子は、ほぼ全裸、透けたスリップも腰から胸へ引き上げられています。薄暗そうな土蔵ですが、天井からの光は明るいです。裕子のからだは、十分に、隅々まで見えます。
「ああ、ああっ、東国さま、ああっ」
東国の右手は股に置かれたまま、親指の腹で陰唇の縁を撫ぜられながら、左手が乳房へのせられてきたのです。そうして、陰唇を這っていた親指が、陰唇をめくり、その親指が、膣をさぐりだし、なかへ挿し込まれたのです。
「うううん、裕子さん、濡れていますね、ヌルヌルですよ、ぬるぬる」
「ううっ、ああっ、東国さま、ああん、あん、あん」
乳房をまさぐられ、乳首をつままれるなか、膣には親指が挿し込まれ、根元まで挿し込まれても奥まで届かない、その親指で膣襞を捏ねられていく28才の才女、大村裕子です。

-15-
裕子の足を縛った縄を、東国がほどきます。でもまだ、裕子は後ろ手に縛られたままです。褌すがたの東国は、慣れたもので、裕子の乳房を絞りあげるようにして縛り上げてしまいます。
「ひぃやぁあん、ひぃいい、ああん、東国さまぁ」
「好きなんだろ、裕子、好きなら好きだと言えばいい」
後ろ手に縛られ乳房が絞りあげられた裕子を、絨毯のうえに寝かせ、仰向かせます。東国は裕子を呼び捨てにして、服従させます。裕子は、窮屈な海老縛りから解放され、足を伸ばして、仰向いたまま、目をつむり、東国の質問に、口をつむんで応えません。好きだろうと言われて、素直に好きですと答えるには、羞恥心、恥ずかしさが伴って、応えられません。
「あっ、あっ、ああ、ああっ」
「ほうら、淡い茶色のお乳首が、起っているんだ、裕子」
東国が、起ちあがった乳首をつまんだのです。
「ううっ、ああっ、あん、あん、ああん」
ツンツンに起ってしまった裕子の乳首。薄い茶色の乳輪に爪を立て、乳首のくびれをつまみ上げる東国です。裕子はその指からの刺激に、汗ばみだした顔の表情が、軋みます。痛いというより、鈍い圧迫が、びりびりとからだの奥へ注がれてくる感覚です。
「ふふふふっ、ドエムだな、裕子、たっぷり、責めてやるよ」
双方の乳首をつまんで、モミモミする東国のドエスに、裕子はわけのわからない感覚です。素っ裸に近い格好。薄いスリップがめくりあげられ、首のしたにまとめられ、紐状です。
「さあ、足を、ひろげろ、自分でひろげろ、ほうら、ひろげろ」
「ああ、ああああっ、東国さま」
裕子は、東国のまえに、もう言われるまま、感情も高揚してきて、足をひろげます。土堂の空いた空間は四畳半、絨毯敷ですが、執務机と肘掛椅子が置かれているから、裕子が仰向き寝ている広さは三畳です。
「ふふふふ、従順だな、裕子、たっぷり、かわいがってやるよ」
土蔵のなかの机と椅子の横、裕子が寝そべった足元に、東国があぐら座りです。
「はぁああ、東国さま、あし、あしを、わたし、ひろげますぅ」
そろそろと、裕子が太ももをひろげます。膝と膝のあいだが60㎝ほどです。寝ているようで起っている陰毛の黒が、東国には眩いです。スポット照明で、裕子のからだへの明るさは十分にあります。裕子を、後ろ手に縛り、乳房を亀甲に絞り上げた東国は、乳首をつまんで、乳輪を舌なめずり、張った皮膚になった裕子の乳房に、舌を這わせるのです。
「ああっ、ああん、東国さま、ああん」
足をひろげた裕子。乳房に唇を這わせられ、乳首を、指にかわって唇に挟まれ、揉まれる裕子です。先に親指を入れられた膣は、まだ放置されています。

-16-
連れてこられた土蔵のなかで、裕子が絵描きの東国から、そのふくよかできりりと締ったからだを、求められているところです。後ろ手に縛られ、乳房が絞りあげられている裕子の上半身を、東国が手と唇で愛撫しています。絨毯に仰向いた裕子は、足をひろげだします。女の性とでもいえばいいのか、ディレクターの仕事ではキリリと締った顔つきで、アルバイトの学生に指示をする裕子だけれど、男の手で裸にされて弄られだすと、打って変わって艶やかな女に変容してしまう28才の裕子です。
「触って欲しいんだろ、裕子、この、濡れた、壺の、なか」
寝そべって足をひろげた裕子の横に、六尺晒で股前を隠してあぐら座りの東国が、右手で乳房を撫ぜあげ、左手で陰毛をたくしあげながら、言ってやります。裕子は、うずうずにされているから、唇を結んで、うんうんと頷きます。からだが火照ってきているんです。どうしようもなく、うちがわから、燃えひろがってくる炎に、裕子は、指を挿し込まれます。
「あっ、いやっ、はぁあああっ」
東国の左手の中指が膣に挿し込まれて、裕子が腰を揺すります。べっちゃり濡れている膣のなか。ようやく刺激を与えられた秘密の壺のなかです。裕子の呻きに東国の心が崩れます。なんと麗しいからだなんだ、濡れてびっちょり、これが、あの、画廊でみる裕子とは、似ても似つかない、女の裕子だ、と東国は頭のなかで、叫ぶように呟きます。
「ううん、いいねぇ、裕子、うれしいのかい、どうだ」
「はぁああ、東国さま、ああっ、あん、あん、もっとおくぅ」
裕子は、足をひし形にして、上半身緊縛された腰を揺すってきます。東国の左手中指が、根元まで挿し込まれ、なおも押し込まれます。奥の奥には届かない中指。裕子の悶えが、いっそう輪をかけるようにして始まります。静寂の土蔵の中、かすかに空調の空気がすれる音がきこえます。
「はぁあ、はぁああ、はぁあああ」
ぺちゃぺちゃ、東国が、裕子の膣なかを捏ねる指からの音が洩れてきます。裕子の甘い、かすれた、呻きの声が静寂を淫らにみたしてきます。
「ああっ、ああん、東国さまぁ、ほしい、ほしい、ほしいです」
女が男に欲しいとゆうのは、男のモノを、膣に挿し入れて、欲しい、ということです。裕子は、東国とは初めての交合です。裕子の方が積極的に求めてい欲求に、東国の方が躊躇するほどでした。東国が褌を解き、裕子の太ももの間に立膝で、ひろげられた股間の真ん中へ、勃起したちんぽを、挿し込んでしまうのです。裕子に覆いかぶさる東国です。裕子の膝裏に腕をまわして、裕子の太ももをひろげきり、お尻を浮かさせ、ぶっすり、ちんぽを挿し込んでやります。裕子は、もう、ヒイヒイ、後ろ手に縛られ乳房は亀甲縛りにされた上半身を疼かせます。顔を、右に左にゆさぶって、喜悦に浸っていきます。
「ああっ、ああっ、ひぃいい、ひぃいいいっ」
久々に、からだの奥を捏ねられる裕子です。本物、ナマ、男の勃起ちんぽです。裕子は、アラフォー独身東国の、からだを揺さぶる激しさに、鳴いて、喜悦の声をあげ、呻き悶えていくのです。

-17-
土蔵の中、三畳分絨毯に、裸体を仰向けにする裕子。後ろ手に縛られ乳房を絞りあげられた裕子が、東国と結ばれるのです。裕子は東国と結ばれるのは初めてです。なるべくしてなった女と男の関係といえば、そのように仕組まれてきたのかも知れません。神の思し召しなんてことは、迷信を信じない理知的な裕子ですが、今日、こうして画家の木村春樹こと浮世絵春画を描く東国との出会いは、運命的な出会いです。
「ああ、いい、いい、東国さま、ひぃいいっ」
太ももをひろげ、膝を立て、かぶさっている東国の勃起ちんぽを受け入れた裕子。ぶすぶすっ、入ってくる男の性器に、久々の感覚、抜けるような快感です。手を縛られ乳房を絞りあげられた上半身の不自由さ。下半身は動かせる。男の愛撫と、ちんぽの挿入で、28才の裕子が悶えます。
「ほうら、裕子さん、気持ちいいんだろ、ほうら、ちんぽ、いいんだろ」
「はぁああ、東国さま、いい、いい、すっごくいい、いいですぅ」
ぶすぶすっ、裕子には、円山にはない東国の若さに、ヒイヒイ、喘ぎの声をあげていきます。
「ひいぃいい、ああっ、ひぃいいいっ」
「ふふふふ、もっと、もっと、いい声を出して、ほうら」
「ひぃいい、ああん、あん、あん、ひぃいいいっ」
「裕子さん、素敵だよ、びっちょりだ、素晴らしいね」
「はぁああ、ああん、東国さまぁ、わたくし、しあわせ、ああ、ああっ」
ぐいぐい、裕子の喜悦が高まっていきます。豊かな臀部、絞りあがった乳房、裕子の顔が、観音様のように穏やかに、そうして慈悲にみちた顔になり、東国の心に、神がジンジンと侵入してきます。土蔵の中、暗いようで明るい絨毯のうえです。裕子が洩らす羞恥の蜜が、こぼれます。滲みになってもかまわない、東国には趣味の域です。淫らな土蔵の中に保管の春画によく似合う裕子の裸体、裕子の羞恥姿です。
「おおっ、おお、おお、裕子さん、おお、おおっ」
東国の射精が昇ってきた感じです。それに合わせるかのように、裕子がのぼりはじめます。
「はぁああ、ひぃいい、いい、いいっ」
「おお、ああ、裕子さん、おおおおっ」
「あああ、ああ、ああ、あああ~~っ」
猛烈な東国の勃起ちんぽピストンで、裕子がオーガズムのうえにのぼっていきます。そうして黄色い悶えの声と共に果てていきます。東国は、スペルマを裕子の顔に放出して終えたのです。